札幌天神山のアーティストインレジデンスに参加し、2月26日から3月5日までの滞在制作を実施してきた。  札幌市の中心部の獅子舞を考える上で、重要なテーマは「開拓」である。  アイヌの歴史的文脈の中で深く根付いた文化の上に、真新しい開拓民の文化が上書きされてできたのが、札幌という約200万人が住む巨大都市だ。
獅子頭づくりは天然水の箱を土台に、北海道大学で拾った松で髪の毛を生やし角をつけた。また土台には側面に北海道新聞の記事やチラシ、広告などを貼り付けて地域を凝縮させるような獅子舞を作り出した。新聞や段ボールのような大量生産を連想させるものがベースにありながらも、そこにアイヌが歴史の中で向き合ってきた森の資源を加えることでその調和のようなものを考えながら作った。どれも全てリサイクルでき森に返せるものであり、持続可能な循環を生み出せる材料を使おうと考えた。獅子頭が縦長なのは北海道の鹿や熊の頭を意識したからだ。滞在中にハンターに付いて歩き、本物の鹿の首を見せていただき、それを被って踊るという試みを行い、それは非常に貴重な経験となった。
獅子舞は三吉神社、札幌市役所、札幌時計台、北海道庁、北海道銀行、北洋銀行、狸小路商店街の1から7ブロック、大通公園で舞いを披露し、三吉神社に戻ってきて奉納の舞いをして締めくくるという流れを考えた。獅子舞の姿で歩いている道中、「獅子舞と記念写真を撮ってほしい」などの申し出はなく、これは秋田市で行ったときとの大きな違いであり秋田市の方が獅子舞生息可能性が高い感覚があった。
実は今回、私が札幌に滞在した2022年2月26日~3月5日は札幌市が観測史上稀に見る積雪量を記録した直後のことだった。飛行機は2度も欠航し、一度の遅延を経て、5日遅れで成田空港から新千歳空港に降り立った。そのような状況下で、どうしても雪という厄について考えざるをえなかった。雪を回避するための知恵として札幌の人々は地下歩道(チカホ)を発達させた。閑散とした地上と混雑した地下の対比関係が面白かった。そのような地上の不便さもあり地下へと潜ることで、便利・快適な交通空間や商業空間が創出された。ただし狭いので獅子舞の生息可能性は地上の方が大きいのは否めない。
ただし雪を厄と捉えるのは勿体無いとも思った。歩行者が通るのに必要な道は踏み固められており、雪が積もっている部分は余剰空間だ。札幌という都市全体が雪を想定した道幅で作られており、除雪した雪を溜め込む余剰空間も様々な場所にある。つまり札幌が雪を想定して都市空間を作ってくれたおかげで、雪解け後に獅子舞を実施すればその恩恵をうまく享受できるというわけだ。そういう視点で空間的なことを考えてみると、札幌市は獅子舞の生息可能性が非常に高い。
映像作品はYoutubeにて公開中。
獅子舞生息可能性都市<札幌>①サッポロビールで獅子を清める
獅子舞生息可能性都市<札幌>⑤鳩と対決する獅子舞
獅子舞生息可能性都市<札幌>⑥さっぽろテレビ塔で、子供に怖がられる獅子舞
獅子舞生息可能性都市<札幌>⑦札幌時計台で起きた奇跡
その他の動画は下記ボタンから。
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