獅子舞の視点を通して土地の性質を見抜きます。今回の対象地は秋田駅周辺の商業地。人口減少や民俗芸能の担い手不足の問題がある一方で、秋田駅周辺ではインフラコストを削減し住空間や商業空間はより高く大きく集中的に設計されつつあります。その中でプライベート志向が強まり、空間的な余白や地域交流の機会が失われつつあるのでは?と感じています。
実際に新聞紙や段ボールなどを使い獅子頭や胴体を制作し、毛糸で縫い合わせ、 地域を身に纏うようにそれを被り町を舞い歩き、空間や人の気質の視点から獅子舞の生息可否を検証しました。「上手だね」と声をかけてもらったり、写真を撮ってくれたりと見知らぬ人々と交流でき、地域の方々は予想以上に獅子舞に対して寛容だと感じました。空間的には舞うことができない場所も多々見られましたが、総じて秋田駅周辺の商業地における獅子舞の生息可能性は高いと言えるでしょう。
7章分のガイドブック、獅子頭や胴体の 実物、獅子舞が実際に街で舞う映像などの制作を行いました。秋田駅周辺の土地の性質を見抜く手がかりになるとともに、暮らしやすさの実現などに必要不可欠な新しい文化を創出する萌芽として機能してくれたらと感じています。
(2022年1月8日から15日 秋田県秋田市にて滞在制作)
◎秋田県秋田駅周辺で獅子舞があったとしたらどこを通るか?というルートを設計
◎ルート上で拾い集めたものや頂いたものを使い、獅子頭と胴体を制作する
◎獅子頭と胴体を使って、どのように動くべきか?舞い方を創作
◎実際にルート上で獅子舞を披露してみる
▼7章分のガイドブックを制作して、獅子舞的視点で町を観た結果をまとめる
◎A5 ガイドブックの構成(導入文の抜粋)
第1章 秋田駅周辺で今何が起こっているのか?
僕は秋田駅周辺を獅子舞の視点で歩こうと思った。秋田県は人口減少とそれに伴う民俗芸能の減少が進行しており、それに伴って秋田駅周辺ではコンパクトシティ化が広がりつつある。経済優先であり個人主義的な考え方が広がっていく一方で、地域の交流機会が減り安心安全で寛容な町のあり方を再考する時が来ている。これについて考える上で、門付け型の獅子舞という生き物を町に放してみたら、どのようなリアクションが返ってくるだろうか?そのような問題意識から開始することにした。(合計 3ページ)
第2章 獅子舞の生息可能性を探る条件
獅子舞を町に放してみたところで、どのように生息可能性を測っていけば良いのだろうか?ここでは地域の家一軒一軒を回って歩く門付け型の獅子舞の大きさや可動域などの舞うために必須となる空間的な条件、およびその測定方法について整理した。(合計 5ページ)
第3章 獅子舞の行動経路を地図化
実際に秋田駅周辺を門付け型の獅子舞が歩いて回るとしたら、どのような経路でいつどのように舞い歩くのだろうか?具体的に地図を見ながら想像を膨らませ、その経路を歩いた。ここでは、写真を撮影してツッコミを入れていくような手法を取り入れ、その中でも舞い場として適するかを優良可の指標で評価した。(合計 47ページ)
第4章 獅子舞が通らない周辺区域と和平交渉
秋田駅周辺市街地には、獅子舞が舞いにくい場所が多数見られた。このような場所に関しては、なぜ獅子舞が舞うことができないのか?という原因を分析して知恵を絞り、そこに獅子舞が舞うために必要なことについて、いくつかの解決策を見出した。(合計 9ページ)
第5章 人の気質を獅子舞的に評価する
子舞の生息可能性は、空間的なキャパシティだけで測れるものではない。その空間を創造した土地に生きる人間という生き物が何を考えて毎日を生きているかを考えるのは必要不可欠だ。ご祝儀出してくれそうな会社がいっぱいあるか?獅子舞の担い手になってくれそうな若者はいるか?祭り好きの精神は根付いているか?など獅子舞的視点から考え、秋田駅周辺の人の気質に迫った。(合計 5ページ)
第6章 獅子頭を作って舞う
獅子頭を実際に作って舞う時、秋田駅周辺ではどのような獅子頭を作ることができるのか?そして、その舞い方はどのようであるのか?について考えてみた。獅子頭の制作工程やその舞い方を写真で表現した「獅子舞グラビア」を掲載した。(合計 19ページ)
第7章 秋田駅周辺に獅子舞がいたら町はどう見えるか?
今回、獅子舞を通して町を観るという実験的な試みから、秋田市はどのように見えたのだろうか?その概論を最後に執筆した。(合計 3ページ)
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