石川県加賀市は石川県南西部に位置する人口約6万人の地域である。山代、山中、片山津などの温泉地があり観光産業が盛んであるほか、大同工業などの機械製造業が発達している。
この地域の獅子舞は日本全国でも稀に見るほどに多様な祈りと舞い方がある。漁村、城下町、宿場町、農村、山村、温泉地という山から海まで豊富な自然資源と多様に地形に恵まれた土地だからこそ、「日本の縮図」であるがごとく祈りの形が多様なのだ。伝来経路もバラバラで、京都から北上して福井県境から伝わった優雅な獅子舞もあれば、金沢から南下してきた加賀獅子もある。また、北前船などの影響で九州の方から、殖産興業の影響で長野の方から、街道を通じた交流により江戸や大阪などから伝わったものまであるのだ。加賀市内には2022年1月現在、獅子頭の残存数が127町となっており、これらすべての町内で獅子舞が伝来したと考えられる。この数字は驚異的であり、日本全国47都道府県で獅子舞は残存しているが100~200件しか継承していない都道府県も多い一方で、加賀市のように1つの自治体が100を超える獅子舞を継承しているのは大変珍しい。石川県は1986年の石川県教育委員会が出した報告書に基づけば、日本全国で最も獅子舞の数が多い都道府県だった時代もある。
加賀市で獅子舞が盛んになった背景としては、大昔に遡れば立山修験や白山修験の興隆が興隆が遠因としてあるだろう。本格的に発展したのは加賀前田藩が成立した江戸時代以降に藩の文化奨励政策である。この頃に様々な獅子舞の流派が生まれ、民衆の生活文化の中に根付いたいわゆる「加賀獅子」の形態が生まれたのだ。また、江戸時代には街道の交通や船の行き来によって、様々な土地から獅子舞が伝来する土壌があっただろう。明治時代以降には若連中や青年団の活動が活発になり、その動きの中で獅子舞が爆発的に盛んになった。獅子舞は「魚がたくさん獲れますように」「お米がたくさん獲れますように」などその土地ならではの祈りを行う一方で、同時に地域の連帯感を高めていくような機能があった。また、土地に対する誇りや住環境の安心安全な暮らしを醸成するような役割もあっただろう。
しかし、今では獅子舞が伝わった127町のうち40町では、すでに獅子舞が途絶えているのが現状だ。この現状を説明するには、まず加賀市が石川県で最も人口減少が進む消滅可能性都市と言われていることに触れねばならない。それに伴ってまず担い手不足の問題が大きくなりつつあるのだ。担い手不足と言ってもその現状は単純に「人がいないから」で片付くわけではなく、大学進学によって一時的に地域外に出ている若者が祭りの時に帰って来るかどうかとか、子供神輿と獅子舞のどちらを残そうか考えているとか、その場にいる個人個人の決断によって左右されている側面がある。それに加えて、娯楽の多様化していたり、地域活動よりも個人の趣味趣向によって行動することが増加していたりという問題も複合的に絡んでくる。
加賀市は日本全国でも屈指の獅子舞が伝承されている地域である一方で、その獅子舞が急速に失われつつある。その中で、この地域の獅子舞は現代の私たちにどのようなメッセージを残してくれているのだろうか?獅子舞を実施する理由も、舞い方も、伝来経路も多種多様であり、獅子舞に対して求めているものも地域によって異なる。獅子舞のホットスポットである加賀市の地域的な特質を描き出すとともに、町の気候風土や生業と獅子舞の舞い方・デザインとの関係性、地域間交流による獅子舞の伝播や相互扶助のあり方など、獅子舞を取り巻くエコシステムを明らかにすることによって地域の見方を異化する新しい地域研究の形を創造する。
<企業や団体の協力>
あくるめ財団
PLUS KAGA project

<活動の記録>
2019年9月 マニアフェスタvol.3 出店
2019年11月 東急ハンズ新宿店 出店
2020年2月 石川県加賀市中央図書館に『我が愛しの獅子鼻』を寄贈
2021年3月 石川県加賀市竹の浦館にてカガコレに出店
2021年3月 石川県加賀市教育委員会, 加賀市小中学校24校, 図書館, 取材先64地区に写真集『我らが守り神 石川県加賀市の獅子頭たち』寄贈
2021年3月 マニアフェスタvol.5 大阪 出店
2021年4月~ 東急ハンズ横浜店 出店
2021年8月 石川県加賀市橋立地区にて、獅子舞の写真展とトークショーを開催
2021年10月 石川県加賀市竹の浦館にてカガコレに出店、獅子頭の制作ワークショップを開催
2021年11月 石川県加賀市片山津公民館にて獅子頭の制作ワークショップを開催
2021年11月 石川県加賀市の全127町の獅子頭取材を完了
2021年11月 石川県加賀市公民館大会にて講演会を開催、127町の獅子頭を掲載したクリアファイルを配布、獅子舞の写真の展示、獅子頭の展示、獅子舞の演舞を誘致など
2022年3月 石川県加賀市21地区会館にて、各地区の獅子舞についてまとめたポスターを掲示
2022年6月 江沼地方史研究会, 大聖寺町民学級にて獅子舞トーク
2022年10月~11月 九谷焼美術館20周年記念 獅子舞演舞 獅子舞講演会の開催
2023年3月 加賀市獅子舞春祭りの開催
2023年6月 加賀市の獅子舞127町の逸話をまとめた『獅子舞多様性特区・石川県加賀市』出版
<記事の執筆>
小学館 和樂web
ジモトぶらぶらマガジンサンポー
オマツリジャパン
観光経済新聞

<メディア掲載実績>
2019年9月号 Favo 南加賀版
2021年3月29日 朝日新聞
2021年4月 石川テレビ リフレッシュ 
2021年4月 加賀ケーブルテレビ
2021年4月30日 東京新聞
2022年2月19日 北國新聞
2022年11月1日 北國新聞
2022年11月3日 北陸中日新聞
2022年12月24日 北國新聞
2023年3月11日 北國新聞
2023年3月20日 北國新聞
2023年3月20日 北陸中日新聞
2023年3月20日 読売新聞
2023年4月13日 北陸中日新聞
2023年11月19日 NHKニュース石川版
2024年3月7日 北國新聞朝刊
2024年3月11日 北國新聞朝刊
<獅子舞関連書籍・グッズの製作>
写真集『我が愛しの獅子鼻』(2019年10月)
写真集『我らが守り神 石川県加賀市の獅子頭たち』(2021年3月)​​​​​​​
獅子舞Tシャツ 緑(2021年1月)​​​​​​​
獅子舞Tシャツ 白(2021年1月)​​​​​​​
A4クリアファイル『シシファイル』(2021年4月)​​​​​​​
A4クリアファイル『石川県加賀市/獅子頭127の守り神』(2021年11月)​​​​​​​
加賀市21地区会館に配布&掲示用の獅子舞ポスター(2022年3月)
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